内部補正レンズの狙いと効果
ショートズームレンズを使ったときの「ある困った問題」とは

ドームポートを使った水中撮影では「ある困った問題」がありました。 レンズの外から入ってくる光線は、最終的にはレンズを通し、カメラの撮像素子面(イメージセンサー)に達しますが、水中の場合、水とドームポートによる光の屈折の影響により、陸上とは異なったイメージでレンズ・カメラに光線が取り込まれてしまいます。
その結果、F値を小さく(絞りを開ける)すればするほど、ワイド端では画像の周辺部が極端にボケたり、不自然に引っ張られたたり歪んだりする「収差」という現象が起きるのです。

本来、入ってくる光線はポート面〜レンズを通過した後、撮像素子面にストレートに収束するのが理想ですが、R(曲線)形状のドームポート、さらにレンズという、いわば二重のレンズを通すことによって、大きな収差が生じます。 この影響を小さくするため、今まではF値を大きく(絞りを絞る)し、被写界深度を深くしなければなりませんでした。

内部補正レンズとは

一言で表すと、水とドームポートにより変化した光の通り道を、陸上での光の通り道に近い状態へと変化(補正)させるためのレンズということになります。 補正は、ドームポート・内部補正レンズ・交換レンズの3つの位置関係で行われています。つまり、ドームポートはレンズの一番玉であり、内部補正レンズは二番玉というふうに、二群二枚の関係で補正しているとお考えください。

この内部補正レンズは、ワイド端画角において2絞り分の解像力向上(像面湾曲と歪曲収差の抑制)を目的に設計しており、画面の周辺部までの鮮明な描写を可能としています。
2絞り分とはどのくらいでしょうか。絞り以外は同一条件で撮った画像を見てみましょう。F値を絞れば絞るほど画面の周辺部における「収差」が抑えられているのがわかると思います。

主な「収差」はレンズ周辺の光束をカットする、つまりF値を大きくすることで改善されるため、収差の目立つシーンでは絞って撮影することが現実的な対策になっています。しかし当然のことながら、実際に撮る写真はF値を絞れば絞るほど、全体の印象が固くなり、アンダー傾向になっていきます。 とくに広角ズームレンズでF値の絞りを開ければ開ける場合、「収差」との対決は避けられません。そこで効果を発揮するのが、この内部補正レンズなのです。

内部補正レンズは凸(とつ)メニスカスレンズという三日月型のレンズです。この内部補正レンズと交換レンズ、そしてドームポートとの「適正な距離感」を考えた場合、使用可能な交換レンズが制限されてしまいます。

※内部補正レンズには、フィルター径77mm用のものとフィルター径82mm用のものがあります。詳しくは専用システムチャートをご参照ください。

F3.5での比較(Nikon AF-S 18-35mm F3.5-4.5G ED使用)

【その他共通データ】使用カメラ : D810、使用ポート :フィッシュアイドームポート240+中間リング40L+中間リング20L

内部補正レンズあり
端部分のズーム画像
内部補正レンズなし
端部分のズーム画像
F4での比較(Nikon AF-S 18-35mm F3.5-4.5G ED使用)
内部補正レンズあり
端部分のズーム画像
内部補正レンズなし
端部分のズーム画像
F5.6での比較(Nikon AF-S 18-35mm F3.5-4.5G ED使用)
内部補正レンズあり
端部分のズーム画像
内部補正レンズなし
端部分のズーム画像
F8での比較(Nikon AF-S 18-35mm F3.5-4.5G ED使用)
内部補正レンズあり
端部分のズーム画像
内部補正レンズなし
端部分のズーム画像
F2.8での比較(Canon EF16-35mm F2.8L II USM使用)

【その他共通データ】使用カメラ : EOS 5D MarkII、使用ポート :フィッシュアイドームポート+中間リング40+中間リング30L

内部補正レンズあり
端部分のズーム画像
内部補正レンズなし
端部分のズーム画像
F4での比較(Canon EF16-35mm F2.8L II USM使用)
内部補正レンズあり
端部分のズーム画像
内部補正レンズなし
端部分のズーム画像
F5.6での比較(Canon EF16-35mm F2.8L II USM使用)
内部補正レンズあり
端部分のズーム画像
内部補正レンズなし
端部分のズーム画像
F8での比較(Canon EF16-35mm F2.8L II USM使用)
内部補正レンズあり
端部分のズーム画像
内部補正レンズなし
端部分のズーム画像
像面湾曲とは

内部補正レンズは「収差」と呼ばれるもの全てを補正しているわけではありません。設計時にSEA&SEAがとくに力点を置いたのは、画面中央部にピントを合 わせると画面の両端がぼけ、画面の両端にピントを合わせると画面中央部がぼける現象。ピントのゾーンがずれながら湾曲してしまう像面湾曲という収差(単色収差のひとつ)です。
また、「収差」といわれる現象は、この像面湾曲以外の主たるものとして、歪曲収差(ディストーション)が挙げられます。撮影対象物が画面の両端に行けば行くほど、引っ張られるように伸びたり縮んだりするのは歪曲収差(ディストーション)と呼ばれ、たる型収差と糸巻き型収差の2種類があります。この現象は使うポートの長さによって大きく左右されます。 この内部補正レンズは、像面湾曲、歪曲収差(ディストーション)の発生を極力防ぐためのレンズなのです。

いかがでしたか? このレンズは透過率の高いARマルチコートガラスレンズを使っています。このため、画質への影響は限りなくゼロの状態に近づけています。あらゆる撮影条件下で各収差を補正し、細部の繊細なディテールまで忠実に作品創りに活かしたい方に対して、SEA&SEAは内部補正レンズの導入を強くおすすめします。